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2019/07/2
食品ロス分科会主催『世界の食糧問題から考える 日本の食品ロス、産地ロス』
開催日時:2月15日(金)13:00~16:00
会場:東京都千代田区外神田
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(※) 食品ロス分科会では、去る2月15日(金)、東京・秋葉原にて食品ロスについて考えるセミナーを開催いたしました。
講演をお願いしたのは国連食糧農業機関のンブリ・チャールズ・ボリコ氏、全国農業協同組合連合会の戸井 和久氏。2018年11月に当分科会が発足し、初の公開セミナーでしたが、食品・外食業界の企業様や食糧関係の団体様、教育関係や生産者の方々など官民・業界の枠を超えて、定員80名のところ90名もの方々にご来場いただき、盛会となりました。御礼と報告を込めてレポートいたします。
地方自治体におけるSDGsの達成に向けた取組と、それに資する「環境未来都市」構想のさらなる推進を通じた、より一層の地方創生に向けて、地方自治体及び地域経済に新たな付加価値を生み出す企業、専門性をもったNGO・NPO、大学・研究機関等の広範なステークホルダーとのパートナーシップの深化、官民連携の推進を図るため、「環境未来都市」構想推進協議会を発展的に改組し、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を発足することとなりました。
詳細はこちらをご覧下さい。
http://future-city.jp/platform/
SDGsは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため,2030年までに世界が取り組む17の国際目標のことです。
詳細はこちらをご覧下さい。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html/
セミナー内容
ご挨拶、地方創生SDGs官民連携プラットフォームとその分科会のご紹介
- 第一部 基調講演 「世界における飢餓や食品廃棄の現状について」
国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 所長
ンブリ・チャールズ・ボリコ( Mbuli Charles Boliko)氏 - 第二部 基調講演 「農業と流通から考える食品ロス」
元イトーヨーカ堂 代表取締役社長&COO
全国農業協同組合連合会 チーフオフィサー 戸井和久氏 - パネルディスカッション
全国農業協同組合連合会 チーフオフィサー 戸井和久氏
さいたま榎本農園 代表 榎本健司氏
バリュードライバーズ株式会社 代表取締役 佐治祐二郎 - 質疑応答、終わりのご挨拶、アンケートのお願い、名刺交換会
はじめに、事務局の山本よりご挨拶と食品ロス分科会についてご紹介させたいただき、さっそく第一部の基調講演へ。国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 所長のンブリ・チャールズ・ボリコ氏に「世界の飢餓と食品ロスの現状について」お話しいただきました。
第一部 基調講演 国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所
所長 ンブリ・チャールズ・ボリコ氏「世界の飢餓と食品ロスの現状」
食品ロスをなくせば、世界の飢餓8億2100万人を救える?!
FAOは「すべての人々が栄養ある安全な食べ物を手にいれ健康的な生活を送ることができる世界」を目指す国連の機関で、ボリコ氏は2013年8月より駐日連絡事務所の所長を務めておられます。日本ではなかなか実感できない飢餓、その人口は8億2100万人だとか。驚きの数字ですが、「食品ロスを減らせば、ゼロにすることができる」と、ボリコ氏は言います。
国連には食糧と農業を担当する3機関(IFAD・WFP・FAO)があり、世界の人々の経済的支援・食料の配布・持続可能な生産活動を支援しています。この中でFAOは1945年に設立、飢餓ゼロと自立した生産活動のために議論の場を提供、データの収集分析、政策支援などさまざまな活動を行なっています。SDGsと照らし合わせると、「腹が減っては、戦はできぬ。FAOのインプットがないとほとんどの課題は困難になる。それほど食料と農業は、SDGs達成には重要なものです」と、ボリコ氏。食料安全保障は途上国だけでなく世界規模で、次世代を考えて取り組むこと。国の問題だけではなく、個人レベルで考えることが大事です。
では、世界の食料事情について。今、世界にはすべての人々が食べていけるだけの食料があるのでしょうか? 会場の挙手では、「ある・ない」の半々に分かれましたが、答えはYES。
「実は世界の食糧は十分にある! 皆が食べられるほど十分にある! それは統計、分析を見てもある。ただし、みんなが動いてそれぞれの役割を果たすことが前提です」。
それなのに、8億2100万人、つまり全人口の9人に一人に食料がない。意外にもその2/3はアジア人で、アフリカでも4人に一人が十分に食べられていません。また、乳幼児の45%は、病でなく栄養不良が原因で亡くなっています。食料があれば、大勢の命を救うことができるのです。
2015年まで低下傾向にあった世界の飢餓は、再び上昇傾向にあります。ショッキングな事実です。主な原因は紛争、気候変動と自然災害、そして経済の停滞です。食べ物を輸出入に頼る国は、経済が滞ると命に関わる問題に発展することもある。これは日本も他人事ではありません。
そんな中、世界では毎日、生産された食べ物の1/3を捨てています。根菜35%、野菜と果物45%、魚は35%、生産されてはゴミになっているのが現状です。特に先進国での食料廃棄が大きな問題で、必要以上の生産、非効率的なサプライチェーン、大量のディスプレイとブランド、無責任な購入と管理も主な要因だとボリコ氏は言います。
「食べ物をゴミにすると、廃棄にはコストがかかり、その分、土壌を汚染、温室効果ガスを発生させて地球環境を悪化させることになるのです」。
捨てれば終わり、ではない。食品ロスは政府が考えることではなく、事業者、消費者個々人が考えるべき問題だと、ボリコ氏は強く訴えます。
日本の年間の食品ロスは646万トン、誰もが毎日茶碗1杯分を捨てているのと同じ数字です。これはいつか、自分に降りかかってくる問題です。
SDGsの目標2「飢餓をゼロに」・目標12「つくる責任 つかう責任」は、目標13「気候変動に具体的な対策を」にもつながっています。私自身は、食べ物は捨てない、余計なものは買わない生活をしています。みなさん、考えなしに食べ物を捨てていませんか? 賞味期限についても考え直すべきです。世界の食品ロスの1/4があれば、飢餓で苦しむ8億もの人々を救うことができます。誰にも責任がある。まずは、今のあり方ではダメだと、少しでも考えるところから始めてください」。
第二部の基調講演は、全国農業協同組合連合会(以下、全農)でチーフオフィサーを務める戸井和久氏にお願いしました。日本の農家組合員の経済事業を担っている全農で、改革を先導する戸井氏が認識する課題とは? そして農業の未来についてお話しいただきました。
第二部 基調講演 全国農業協同組合連合会
チーフオフィサー 戸井和久氏 「農業と流通から考える食品ロス」
世界的に激化していく食料争奪戦、
食品ロスを減らすことが日本の自給率をあげるカギになる!?
戸井氏は2016年2月までイトーヨーカ堂で代表取締役&COOを務められ、38年の在社中、生産者と消費者をつなぐ商品ブランド「顔が見える食品」や、食品残渣を堆肥化して循環させ地域農業の活性化に貢献する事業「セブンファーム 」を立ち上げ、コールドチェーン(低音物流網)など物流の革新も確立されました。現在は全農にて、日本の未来を考えた農業改革を最前線に立っておられます。ここでは持続的な商売という観点からの食品ロスについて、大変興味深いお話が伺えました。
まずは現在の全農での取り組みについての紹介から。
全農では、組合員の生産効率上昇を目的に、従来のカテゴリー営業ではなく、外食・中食など需要にあった商品形態の生産をしてもらうための営業開発部を組織。また、実需に基づく生産と供給を目指して従来のPUSH型チェーンを改革し、生産・流通・販売のチーム体制でそれぞれの付加価値をあげ、生産進行を行う取り組みも始まっているそうです。このような需要にあった供給は、ロス削減の根本にもなります。
これらの動きを背景に見ると、「日本は優秀な食品ロス大国です」と、戸井氏。「生産段階でのロスは統計上把握できていないが、そこにもブラックボックスがあるはずです」。
具体的な数字を見てみましょう。日本の食品廃棄物等は年間2842万トン、そのうち、本来食べられるのに捨てられる食品ロス量は646万トンです。(内訳は、食品関連業者の規格外品・返品・売れ残り・食べ残しが357トン、家庭からの食べ残し、過剰除去、直接廃棄が289万トン)。
大量のロスを生む原因は、災害や天候不順、農家の高齢化や人手不足による「収穫しきれない生産物」の発生、単身・2人世帯の増加、外食・中食・eコマース・食品を扱うドラッグストアの増加などの環境変化に対する流通への対応不足などがあります。そして、食品ロス問題でよく取り上げられる「1/3ルール」、青果物の出荷規格など長年の商慣習も大きな影響を与えています。
1/3ルールについてはイトーヨーカ堂やイオンリテールなどが参加して、納品期限の緩和などルール見直しの動きが始動、青果物の出荷規格についても、産地と実需の双方が受け入れ可能な基準に変え、加工品で規格外品を使用する動きも各所で進められています。
「全農での取り組みとしては、都内で規格外品を取り扱う『旬八青果店』を営む(株)アグリゲートへの出資、また生鮮品のロングライフ化のための包装資材の活用も進めています」。
またプロトン冷凍、CAS冷凍といった冷凍技術の進化もロス削減につながるもの。これは、「使う分だけ解凍する」など消費形態の変化です。従来は冷蔵庫が家庭のストックポイントであったのが、必要分だけ買う、キット商品の購入など消費の仕方は多様に変化しており、物流でいう「ラスト1マイル」の動きがポイントになるとか。
「全農では外食・中食に納品するベンダーさんと提携して、出荷を予測のもとにコントロールしたり、業務用として規格外青果物を製品化。地元のパートナー企業と組んだ労働力支援スキームやIOTの活用など、食品ロス対策を図りながらも組合員さんをサポートする動きを進めています。しかし、全農だけでできることは限られています。流通、小売などさまざまな現場とのアライアンス、そして繰り返される気候変動に備えて、県間でもリレーションを築いてリスクヘッジするなど連隊での動きも必要になるでしょう」。
これらは、持続可能な農業の未来を見据えた動きです。
「日本の人口は減ってきていますが、世界的に見るとどんどん増えています。2100年には100億を超えるとも。食料需給率が伸び、供給が間に合わない恐れもあるなか、日本の食料自給率の低さは致命的です。これをどう考えるか。私は、食品ロス646万トンに生産現場での廃棄を含めると、このリスクをカバーできるのはないかと考えています」。
さらに、自分たちの関わるところから変えていこうという発想が大事だとも。
「我々の役割は、産地できちんと生業が立つようなインフラを整備すること。そして都市の人々には農業に関心を持っていただきたい。農業はやり方次第で生産性が上がり、定年のない素晴らしい仕事です。
飢餓をなくすという世界的目標のもと、生産、流通、消費と、それぞれの現場で何が変えられるのかを考えるべきです。SDGsで言えば、2.「飢餓をゼロに」を達成するために、12.「つくる責任、つかう責任」、13.「気候変動に具体的な対策を」、15.「陸の豊かさも守ろう」も重要視したい。さらに17.「パートナーシップで目標を達成しよう」。パートナーシップを持って仕事をし、それぞれが社会的な責任を農業の現場に組み入れることで、商売が成り立っていくと思っています」。
第三部 パネルディスカッション
登壇:全国農業協同組合連合会 チーフオフィサー 戸井和久氏
さいたま榎本農園 代表 榎本健司氏
バリュードライバーズ株式会社 代表取締役 佐治祐二郎
最後は、生産者や食品ロスの削減に取り組む種団体によるパネルディスカッション。生産現場や流通工程における食品ロスが発生するメカニズムをひも解き、その解決方法を模索しました。
まずは事業紹介から。
榎本氏:私の業務内容は、埼玉で農業、施設でトマト栽培のほか路地野菜を100種類ほど作っています。水耕栽培や全国的に2件しか例のない「KFT農法」も取り入れているほか、収益を上げていくために生産プラスアルファとして、飲食・加工・娯楽・教育といった4つの柱を立てています。
具体的には、
飲食:農家レストランの経営。昔ながらの農家の家を改造して活用しています。
加工:まんじゅう、ジャムやドレッシングなど、B品を使って加工しています。
教育:『アグリイノベーション大学校』という新規就農者向けの学校で、都会の潜在就農者、地方の農家の後継者などの教育活動に参加しています。
体験・娯楽:子供向けの農業体験教室を開催。農育食育で黒字収益を出しています。
廃棄ロスについては、生産現場ならではの取り組みを。子どもが野菜嫌いだと廃棄につながるので、食育から始めるをテーマに、子どもへの体験学習を進めています。子どもが野菜好きになれば捨てずに済みます。これを都内の学童クラブと共同でやって収益をあげています。少人数ではなく、50~80人規模で開催し、人数が安定すれば体験学習も黒字化できる。このほか、家屋周辺の竹林の竹を使って『ピタゴラ流しそうめん』を開催するなど、農家でしかできない体験を行っています。
佐治:弊社では『tabeloop(たべるーぷ)』というフードシェリングのプラトフォームを設立、運営しています。これは食品ロスになりそうな商品をWEBに掲載して、売り手と買い手をつなぐというマーケットです。売り手はメーカーや卸業者、生産者の方、買い手は飲食店や外食チェーン、仕出しや個人の方など。食べられるのに廃棄されてきた商品を付加価値をつけてうることを目的としています。
それぞれの事業から見た食品ロスについて。
佐治:エンドユーザー、つまり消費者は買いすぎて食べられない、飲食店小売事業者の方々は売れずに廃棄する。小売店は1/3ルールで廃棄の実情もあり、食べ物がうまくループしていない現実を実感しています。上流をさかのぼると、生産現場では数字に出ないけれども廃棄が多く、心が痛むシーンをたくさん目にします。作る側と食べる側をうまくつなぐ方法がもっと必要、これは活動をすればするほど実感するところです。
例えば、今回のセミナーでは、銚子の農家・ヘンリーファームさんが、異常気象で大きくなりすぎたキャベツを加工して、ご来場くださったみなさんへのお土産として「ザワークラウト」を提供してくださいました。廃棄してしまうのではなく、時間と労力をかけてでも廃棄を減らしたいと考えていると仰っています。このような天候不順によるロスの発生、供給過剰で畑ごとの廃棄や規格外品廃棄の実情もたくさんあり、もっと多くの方に現場を知ってもらいたいですね。
榎本氏:今年は暖冬の影響が大きくロスが出ると思います。農家は各自生産計画を行なってはいますが、収穫から逆算するため、どうしても種まきの時期は重なり、そこに暖冬が来ると、過剰収穫となってしまう。そんなとき、うちでは、 SNSの発信で急遽収穫体験会を開催するなどしています。都心に近いからできることですが、採ってもらって、喜んでもらって、なおかつ収益にもなるという農家側の工夫です。
また、傷物、B品は加工に回して冷凍しておき、マルシェのイベントを開催して、スムージーやかき氷など二次加工して自ら売ります。このように、現場での工夫、考えられることはまだまだあると思います。
三部構成で3時間、あっという間に時間はすぎ、終了後はご来場の方々にアンケートにご記入いただき、閉会後は名刺交換などの交流も行われました。
世界の実情、ビジネス現場での取り組みを知り、ご来場くださった多くの方々に、「今後の課題を得た」との好評をいただきました。ありがとうございました。今後もこのようなセミナーを開催し、情報の共有とネットワークの構築を目指し、食品ロス削減に貢献していく所存です。
最後に、各部での質疑応答も簡単にご紹介します。
<質疑応答>
【第一部】
Q:世界の食料をどうやって分配するか、研究は進んでいますか?ボリコ氏:グローバルなフードバリューチェーンの構築は進んでいます。食べ物はいつもシステムから考えるといい。システム構築を考える経済学者もいます。FAOだけではなく、OECDなどとも連携を進めています。
Q:経済活動との関係についてのご意見は?ボリコ氏:SDGs達成のためには、パートナーシップも大切です。企業も儲けるだけでなく次世代のことも考えながら経営に取り組むべき。SDGaの12.「つくる責任、つかう責任」、企業の責任として、食品ロスを考える企業が増えています。
【第二部】
Q:需要予測におけるAIへの取り組み、水耕栽培など農業のリスク削減への取り組みについて伺いたい。戸井氏:AIの利用は土壌の分析や生育状況の調査、出荷や収穫予測なども行なっています。ただし、これらは供給先、つまり必ず出口が決まっている場合です。中食外食のベンダーさん向けのケースが多く、一般向けにはまだ難しい。
水耕栽培については、関東地区で行なってはいます。安定的ではありますが、コストがかかるなど課題は多いのが現状です。
Q:農家の人手不足への全農の支援について戸井氏:農業支援というものは、全国一律ではできないと考えます。地域ごとで作っている商品によっても条件が違ってくるからです。現在、農協傘下の農家の方たちと、県ごとにやり方はあるが課題を検討中です。4月には次期3カ年計画を立てますが、その中に労働力支援も組み込んでいます。全てを農家の方だけに任せるのでは立ち行かないのが現状、経済事業を担うメンバーも関わって解決していこうという動きもあります。
Q:農薬削減として電解水などの利用はあるか戸井氏:農薬をなるべく減らすのは、農業の世界では当たり前になっています。電解水に限らず、もっともっと減らせるきっかけ、アイデア、活用例も知りたいと思っています。
【第三部】
Q:tabeloopについて、業務用の食品ロス解決、買い手や飲食店からの反響は?佐治:飲食店に限らず一般消費者からの反響が大きいです。昨年6月に事業立ち上げのリリース直後、フードシェアについてのTV番組を見た主婦の方が多数登録してくださいました。 「コストコのWEB版」と捉えて、みんなで買ってみんなでシェアしてくださる方々も。BtoCの使い方や飲食店同士の交換など、今後の広がりに期待しています。
Q:子供食堂や0円スーパーへの取り組みについて戸井氏:「全農イノベーション」としてトライアル企画を募集したところ、子供食堂の発想もありました。農業の現場にいるお母さん方からサポートいただくトライをしていきたいと考えています。
榎本氏:さいたま市のコミュニティにはさまざまあり、子供食堂のキーワードもたくさん出ています。 食材を提供して欲しいというオーダーもありますが、現段階では方法等を検討中です。配達はどうするか、トラブルがあったときなどマニュアルを整備していきたいと考えています。
佐治:神田などに店舗を構える飲食チェーンさんと、地方のフードロス品を産直で集めて子供や飲食店を運営される方々と食べるという企画を計画中です。
Q:農作物は安さ、値段にとらわれがち。1/3ルール撤廃のための見せ方、違う価値観のための働きかけについて聞きたい戸井氏:2002年の「顔が見える食品」は、5名の農家からスタートしたものですが、毎年200名くらい増えています。これは互いの信頼関係があるから。作った商品を、責任を持って販売してくれる、味が落ちた場合はいかに管理するかなど、双方WINWINの関係を密に話し合うことで信頼関係が構築できる。こうして生産者の指名買いも行われている例もあります。農薬散布の情報公開など農家の思いを伝えることも大事ですね。
また、デジタルサイネージを使って、店舗ごとに売りたい商品、産地のPRなども行う取り組みも行っています。
Q:学校現場でフィードバックをしたいが、教育業界への期待は?戸井氏:先日、新聞でアメリカの学校の取り組みを読みました。ケールを栽培し収穫して食べると、生徒たちが野菜嫌い克服したという、いい試みです。学校給食でも子どもたちがもっと野菜が好きになる方法があればいいと思います。
榎本氏:野菜嫌いの子どももたくさん来園していますが、結果、何もしなくても食べます。自分が種をまいて、育てて収穫したものは、達成感で自ら食べるのだろうと。こういう達成感やストーリーをどう知らせるか、学校でも葉物の栽培などに取り組んでもらうといいかと思います。種を植えると葉が出ることすら知らない子も多い。子どもにいかに興味を持ってもらえるかが大事です。現在、新規就農者も増えてはいますが、5年で助成金が打ち切られた後に、収益が少なくて辞めていく方も多い。こういう現実を踏まえて、子どもにも農業の未来を示してあげる必要もあります。
佐治:我々はSDGsの2と12を追う取り組みを行っているのですが、先日、WEBでご覧になった埼玉の上尾市の中学生が課外学習として話を聞きたいとオフィスを訪ねて来てくれました。
我々に限らず食品ロスの削減について戦っている企業や生産の現場は、門戸を開いている方も多いので、積極的に連絡して現場に話を聞きに行ってもらいたいです。リアルな生産者の方の声を知ることが大事かと思います。